長編ミステリー小説 【名の無い贈り物】
ソレは突然自宅に届いた。
4月7日。つまり俺の誕生日の朝に大きな荷物が届いたのだ。

誕生日当日の朝に荷物が届いたという事は
仲間や友人の誰かからの誕生日プレゼントだろう。と思い
差出人の名前を確認する。
ところが、そこには見覚えのある仲間の誰かの名前ではなく、
全く身に覚えのない会社名が記載されてある。

だが、宛先は『中華武ぞう 武徳様』
こんなふざけた宛先にするのは、仲間内の誰かに違いない。
どういう理由で自分の名前を伏せたのだろうか。
一体誰が・・・?
一体誰がこんな大きな荷物を・・・?
恐る恐る、梱包してある赤いハート模様のビニールを開封してみる。
すると中からは、圧縮梱包されたクマらしき、何かが。

クマの着ぐるみ?クマの布団?
それにしても、かなりの大きさだ。
中に同封されていた取り扱い説明書を読んでも、注意事項は書いてあるが
ソレが何なのかは、一切記されていない。

誰からなのか?一体これは何なのか?そして一体何の目的で?
その事実が判明しない限り、怖くて圧縮梱包は解除出来ない。
差出人が不明という事は、こちらから送り主に連絡を取る事は不可能。
荷物を送っておいて、俺からのお礼の連絡が無ければ
必然的に向こうから、連絡をして来るだろう。
俺はその荷物をそのままにして、仕事に向かった。
そう軽く考えてたこの出来事が
この後、とんでもない事件に発展するとは、この時はまだ知る由もなかった。
朝の仕込みを終え、営業が始まった。
ありがたい事にその日はお店も忙しく、多くの方から
LINEやSNSに『誕生日おめでとう』のメッセージがあり、
その返信などにも追われ、あっという間に一日が過ぎた。
ただ、一番連絡が欲しい人間からの連絡は無かった。
そう。この日の朝、俺の自宅に巨大なクマの何かを送り付けた人物だ。
仕事を終え、熱いシャワーを浴びる。
その時に、俺の意識の中にまたあの一抹の疑問がよぎった。
一体誰なんだ?そしてあの荷物は何なんだ?
重い鉛のような嫌悪感が胃に広がる。
だがすぐに、その嫌悪感がこの凶悪事件をこの手で解決したい使命感に変わった。
急いでバスルームを出て、スマートフォンを手に取った。
今までこういうドッキリサプライズをやられたり、やりそうな容疑者に
片っ端から聞き込みを開始した。
ドッキリと言えば登山会。

彼らのグループLINEに
『これ、君たちの誰か?』と写真を添付してメッセージを送信する。

答えはNO。全員『違います』の返信。
登山会女子が所属する“ニラヤマ組”にも聞き込みをしたが答えはシロ。
正月や周年の時には、いつも奇妙な書初めを持ってくる女弟子。

もちろん彼女にも『これ、君の仕業?』と写真と共に聞き込みを行った。

彼女は『ちょっとちょっと、なんでもうちらのせいにしないでくださいよ』と
俺からの取り調べを煩わしそうに訝しんだ。
人相は一番犯人らしい、後輩ケーにも。

『これ、君じゃないよね?』

誕生日には、必ず贈り物を送ってくれる、埼玉のルコにも。

彼女にはあえて、カマをかけて『これ、君でしょ?』と聞き込んだ。

同じく、いつも誕生日や周年の時には贈り物を送ってくれる、東京のアーにも。

『これ、君?』

そして、これだけの容疑者の中で、限りなくクロに近いと思っていた
俺の誕生日には、必ず焼津からいやげものを持って現れる花城組にも。

だが、これだけ沢山の容疑者に、厳しく聞き込んでも全員の答えは・・・
NO。

これだけの人数に聞き込みをしても、手がかりゼロか。
いや、最後に1人いる。今朝クマを見た瞬間、すぐに脳裏に顔が浮かんだ人物がいる。
前日、俺に誕生日プレゼントで流れる電光キャップをくれた、後輩ティーだ。

なぜなら、俺は過去に2年連続でティーの誕生日プレゼントに
巨大なクマのぬいぐるみを勝手に玄関に置いておく。というドッキリをしてるんだ。

このそうそうたる容疑者の中で一番動機が強いのはティーだ。
クマにはクマで仕返しをするという強い意識が芽生えるはずだ。
そして前日の流れる電光キャップはフェイク。
本命はこっちのクマだったに違いない!
手荒な真似はしたくない。お願いだ。自供してくれ。
そう思い、ティーに取り調べを開始した。
『これ今朝、家に届いたんだけど、君じゃないよね?』
少し間を空けて、ティーが静かに口を開く。
『俺じゃないです(笑)』『クマ二匹返却しましょうか?(笑)』

断る。巨大なクマが三匹になったら邪魔で仕方がない。
その後も少し取り調べを粘ってはみたものの、
結局自供は得られず、ティーは釈放。
仲間内以外の、心当たりのある何人かの容疑者にも聞き込みをしたが結果は同じ。
皆一様に『知りません』『僕じゃありません』『私じゃありません』との答え。
この日の聞き込み捜査は行き詰まってしまった。
重い疲労感が脳と体を襲う。
『他に誰かいるだろ!!!』『記憶を呼び戻せ!!!』
『もっと頭を回転させろ!!』『冷静になれ!!』
そう自らに喝を入れて、自分を奮い立たせる。
すると、一瞬の閃光が頭の中を駆け巡った!!!
そうだ!!俺は大事な事を見落としてないか?
犯人はいつもの仲間達とは限らないのではないだろうか?
そもそもこのクマは誕生日プレゼントではないのではないだろうか?
家族の誰かが買ったモノなのかもしれない。
そう思い、息子にも早速聞き込みをした。
『これに心当たりある?』

彼からの答えは『ない笑』『誕プレだら笑』
そうなんだ。普通に考えるとそうなんだ。
誕生日の朝にこんな巨大なクマが届くなんて、
誕生日プレゼント以外に考えられない。
という事は、今日聞き込んだ容疑者達の中に
嘘を付いている人物がいる可能性が非常に高い。
だが、全員のアリバイはシロ。
捜査は振り出しに戻ってしまった。
今晩はもう遅い。仕事と捜査で徒労した。
俺はベッドに潜り込んだ。
だが、体の疲労感とは裏腹に、頭は冴えていた。
無理矢理眠ろうと思って目をつぶったが、なかなか寝付けない。
ふと、目を開けたら寝室に片付けた、あの圧縮梱包のクマと目が合った。
その目はこの事件の難解さに苦戦してる俺を嘲笑っているように見えた。

『明日は必ず・・・明日はコイツを送り付けた犯人を必ず探し出してやる』
そう心に誓って、俺は毛布にくるまった。
翌日【4月8日】
誕生日は昨日で終わったというのに、
この日も誕生日プレゼントを持って来てくれる仲間達が沢山来てくれた。
いつメンの1人ヤマちゃん。

武ぞう女子部マチャ。

本当にありがたい。
だが、わざわざプレゼントを持って来てくれた仲間達にも、心苦しいが
『誕生日当日に大きなクマの何かが届いたんだが、心当たりないか?』と
容赦ない取り調べを行った。
ヤマちゃんは
「俺じゃないです。そのクマのぬいぐるみ、まだ圧縮梱包を開封してないんですか?」
「まだ犯人が分からないから、圧縮梱包したままにしてあるんだ」
そう答えると、
「いつメンのともしんや、そんな事やりそうな奴らに、俺も聞き込みしてみますよ」
とヤマちゃん。
マチャは
「私じゃないです。〇〇さんとか怪しくないですか?」
「そんな事やりそうな人、思い出したら連絡しますね」と
2人とも捜査協力をしてくれる事に。
それは助かる。こういう捜査は地道な作業で意外と知力と体力を消耗する。
協力者は多ければ多い方が良い。
そしてもちろん、この2人も自供は無し。
この2人もまだ容疑者に変わりないが、今の所、犯人である可能性はかなり低い。
俺はもう一度、数少ない情報を徹底的に洗い直す事にした。
もう一度、荷物に張り付けてあった宅配伝票に目を通す。

今のところ、手がかりはこの伝票しかない。
まず、その伝票に記載されてる千葉県成田市にある会社を徹底的に調べた。

楽天やAmazonに出店してる雑貨店。という事が判明した。
ただ疑問も数多く残った。
楽天のページを開くと、肝心な巨大なクマは販売してない。
もっと怪訝だったのは、この会社の要項を調べると、
会社の代表者の名前は中国人であった。
つまり中国人が経営するインターネット販売専門店と言う事になる。
そこまで調べると1つの懸念が浮かんだ。
仲間の誰かが誕生日プレゼントで自宅に送って来たのではなく、
中国人犯罪集団が勝手に荷物を送り付けて、
後で膨大な金額を請求されるような、詐欺なのではないか?
それとも圧縮梱包されたクマの中に、大量の覚せい剤が仕込まれていて、
俺は知らない間に薬物の売人に仕立て上げられてるのではないか?
そう考えるとますます圧縮梱包は簡単に開封出来ない。
俺は重大な何かを見落としてるのかもしれない。
これは俺が考えてるより、遥かに複雑で難解な事件なのかもしれない。
そう考えると背筋に冷たいものが流れた。
その不安や恐怖を打ち消すように、
今度は伝票にあった商品番号やカラーを徹底的に調べ上げた。

すると、ようやく肝の情報を得る事が出来た。
このクマの正体が分かったのだ。
これはクマの被り物でも、クマの毛布でもなく、
人間並みの大きさのクマのぬいぐるみであった。

つまり、犯人はこの巨大なクマのぬいぐるみをAmazonで買って
この会社から直接、無記名で俺の自宅へ送り付けたという事になる。
という事は、俺の中国の詐欺集団の犯行説の推理は杞憂に終わった。
でもこれで間違いない。
犯人は自分の名前を隠し、圧縮梱包してある
巨大なクマのぬいぐるみを勝手に俺の自宅に送り付け、

何も知らずに封を開封したら、みるみるうちにモコモコと
人間並みに大きくなるクマに戸惑う俺の姿を想像して笑っているのだ。

許せん!!そんな凶悪な愉快犯は絶対に許せん!!
絶対に・・・絶対にこの手で犯人を捕まえてやる!!
俺はまだ霧の中にいる犯人の正体を想像して固く拳を握った。
拳の中の掌に爪が食い込んで、薄っすらと血が滲んでいた。
翌日【4月9日】
捜査は難航していた。
この日も捜査協力者のヤマちゃんが、昼ご飯を食べに来てくれたり
マチャからもLINEがあったが、犯人に繋がる有力な情報は得られなかった。
そして朝には容疑者の1人、埼玉のルコから誕生日プレゼントが届いた。


キチンと差出人の名前も書いてある。二度も郵送でプレゼントを贈ると言うのは
ルコが犯人だと言うのは考え難かった。
夜には一度聞き込みを行った、限りなくクロに近いと思われた
花城組が誕生日プレゼントを持って、焼津から現れた。

中身は正真正銘いやげものの詰め合わせ。

一度巨大ないやげもののクマを送り付けたのにも関わらず
もう一度いやげものを持って、わざわざ焼津から来てくれた彼らを
やはり埼玉のルコ同様、犯人に結び付けるというのは考え難かった。
未だかつてないほど、捜査は壁にぶち当たった。
手掛かりが少ないうえに、容疑者全員が犯人の可能性が低い。
こんな事件は初めてだ。このままでは迷宮入りになってしまう。
いや、俺は絶対に諦めない。この事件は俺が必ず解決する。
花城組が帰った後、1人になって、
この事件のこれまでの犯行の流れを頭の中で整理した。
まず、犯人は俺の知らない人物の可能性は限りなく低い。
何故なら俺と面識がなければ、無記名にする必要はないからだ。
そして宛名。『中華武ぞう 武徳様』
こんな風に書くのは仲間内の仕業にほかならない。
間違いなく、俺が聞き込みをした容疑者の中に必ず真犯人はいる。
誰かが・・・誰かが嘘をついている。どこかがおかしい。
本能がそう、わめき始めている。その疑問が増殖し、脳の中で膨らんでいった。
もう一度容疑者をノートに書き出して整理する。
【登山会&ニラヤマ組】【女弟子】【後輩ケー】【埼玉のルコ】【東京のアー】
【花城組】【後輩ティー】【ヤマちゃん】【マチャ】そして【息子】
犯罪者には、それぞれ特有の心理状態がある。
『犯人は現場に戻る』という言葉があるように
放火犯は、自分が火事にした現場を野次馬のフリをして見ている事が多いし、
凶悪犯も、自分が犯罪を犯した場所を警察官が現場検証をしているのを
やはり野次馬のフリをして見守っている事が多い。
そして真犯人は、『秘密の暴露』と言って、犯人しか知るはずのない事実を
取り調べや何気ない会話の中で話してしまう。という傾向がある。
その事を強く意識しながら、この全員への取り調べを思い出し、
集中して、聞き込みのLINEをもう一度隅々まで読み返す。
何度も。何度も。
その時!!!!
頭の中に強烈な雷光が落ちた。暗闇だった頭の中が眩しい光で満ち溢れた。
バラバラになっていたパズルが“カチッ”っと音を立ててはまった。
今までぼやけた残像でしかなかった犯人像が、
霧の中からハッキリとした形になり、真犯人の顔が鮮明に頭の中に浮かんだ。
「そうだったのか・・・真犯人はアイツだったんだ・・・」
翌日【4月10日】
この日は爽やかな初夏のような陽気で、
一日中、半袖で十分なぐらいな暖かな日だった。
午前中、捜査協力者のヤマちゃんが
「これ、誕生日プレゼント第二弾の里芋でーす。みんなで食べて下さい!」
そう言って、美味しそうな里芋を沢山持って来てくれた。

「わーありがとう、ヤマちゃん!いつも悪いね」と俺。
その俺に「どうです?クマの真犯人見つかりましたか?」とヤマちゃん。
ヤマちゃんにこう答える俺。
「なんとなく、犯人と目星を付けた人物はいるんだけど、まだ最終的な確証が無くてさ」
「え?凄い!犯人分かったんですか!?誰です!?」
少し興奮気味のヤマちゃんに、俺はこう答えた。
「ねぇヤマちゃん。この里芋は誕生日プレゼント第二弾じゃなくて
第三弾なんじゃない?」
「え?どういう事ですか?」と驚いた様子のヤマちゃん。
俺の言ってる言葉の意味が理解出来てないのか、困惑した表情を浮かべるヤマちゃん。
その目をしっかりと見据え、俺はこう言った。
「ヤマちゃんのプレゼント第一弾は巨大なクマのぬいぐるみだよね?
そして、誕生日の次の日に持って来てくれたのが実は第二弾。
って事は、この里芋は誕生日プレゼント第三弾という事になる」
「・・・・」黙り込むヤマちゃん。
「誕生日当日に俺の自宅に巨大なクマのぬいぐるみ送り付けたの、ヤマちゃんだよな?」
「・・・・」里芋を持ったまま、無言でうつむいたまま動かないヤマちゃん。

「つまり、この【名の無い贈り物事件】の真犯人は、ヤマちゃん・・・お前だ」
しばらくの沈黙の後、微かに震えた声で
「なんで・・・なんで分かったんですか?」とヤマちゃん。
「誕生日の次の日に来てくれた時に、俺はヤマちゃんに
『誕生日当日に大きなクマの何かが届いた』とだけ言った。でもヤマちゃんは俺に
『そのクマのぬいぐるみ、まだ圧縮梱包を開封してないんですか?』と答えた。
俺は“ぬいぐるみ”そして“圧縮梱包”なんて一言も言ってない。
その事を知ってるのは、クマを送った人物。そう。つまり真犯人しかいないんだ」
「それと『犯人は現場に戻る』って言うだろ?
誕生日の次の日から三日間連続でウチに来てたの、ヤマちゃんだけだよ。
証拠を残してないかとか、自分がまだ犯人とバレていないかとか、
捜査がどこまで進んだとか、心配だったんだよな?今日もそうだったんだろ?
今日またお前が現れて、やっぱり真犯人はヤマちゃんだったんだ。って確信したよ。」
まだヤマちゃんは、下を向いたまま動かないでいる。

そんなヤマちゃんに「なんでプレゼントにクマを選んだの?」
と、優しく聞いてみた。
1つ小さい息を吐いた後、
「武さんち子供達も成人して、奥さんと二人になって寂しいだろうから
ペット代わりに。と思ってクマのぬいぐるみにしたんです」と話すヤマちゃん。
「でもただのぬいぐるみじゃ面白くないから、巨大ぬいぐるみにして
武さんが何も知らずに圧縮梱包を開封したら、クマがどんどん大きくなっていって、
きっと武さん、焦って慌てておもしろいだろうな~って考えてました。」
動機は俺の推理通りだったってわけだ。
ただ、最後まで分からなかった事が1つだけある。
何故、差出人を無記名にしたのか?
なんでヤマちゃんは自分の名前を書かなかったのか?
そう言って、ヤマちゃんにその差出人の書かれてない伝票を見せた。
するとヤマちゃんの口から衝撃の事実が告げられた。
「え!?俺、自分の名前書いてませんでした!?」

「あ~だから武さん何も連絡して来なかったのかぁ~クマを届けた次の日に
武ぞうに行った時に『オメーあんなでけぇクマ、送ってくんじゃねぇよ!』
って、武さんに言われないから、ガチで怒ってんのかと思ってましたよ~
だから、毎日武さんの様子見に来てたんです。そうか~俺、名前書き忘れてたか~」

オメーバカなの?天然かっ(笑)
なんと、真犯人のヤマちゃんは、本当は普通に大きなクマのぬいぐるみを
俺の自宅に送って、誕生日プレゼントにしたいだけだったのに、
差出人の欄に自分の名前を書き忘れるというミスを犯したのだ。
犯罪というのは、計画的に人を傷つけるような凶悪犯罪もあれば、
正当防衛ような、人や自分を守る為に起きてしまう事件もある。
今回のこの事件は、まさに後者に属すであろう。
今回の事件のように、ちょっとしたイタズラ心が、
犯人のたった1つのミスで、大事件に発展してしまうケースもある。
ヤマちゃんに罪はない。
ただ純粋に俺の誕生日を祝いたかっただけなのだ。
恨むとするならば、ヤマちゃんの天然ボケを恨もう。
俺もいつ、被害者から加害者へ変わる時が来るかもしれない。
そしてそれは俺だけではなく、誰にでも起こりえる事なのだ。
事件は解決した。安堵感が俺の心と体を包み込む。
俺は窓を開け、外の空気を吸い込んだ。
4月の初めだというのに、外はもう初夏のような陽気だ。
少し暑く感じたが快晴の空が心地良かった。
俺はその空を見上げ、静かに目を閉じた。
【完】
4月7日。つまり俺の誕生日の朝に大きな荷物が届いたのだ。

誕生日当日の朝に荷物が届いたという事は
仲間や友人の誰かからの誕生日プレゼントだろう。と思い
差出人の名前を確認する。
ところが、そこには見覚えのある仲間の誰かの名前ではなく、
全く身に覚えのない会社名が記載されてある。

だが、宛先は『中華武ぞう 武徳様』
こんなふざけた宛先にするのは、仲間内の誰かに違いない。
どういう理由で自分の名前を伏せたのだろうか。
一体誰が・・・?
一体誰がこんな大きな荷物を・・・?
恐る恐る、梱包してある赤いハート模様のビニールを開封してみる。
すると中からは、圧縮梱包されたクマらしき、何かが。

クマの着ぐるみ?クマの布団?
それにしても、かなりの大きさだ。
中に同封されていた取り扱い説明書を読んでも、注意事項は書いてあるが
ソレが何なのかは、一切記されていない。

誰からなのか?一体これは何なのか?そして一体何の目的で?
その事実が判明しない限り、怖くて圧縮梱包は解除出来ない。
差出人が不明という事は、こちらから送り主に連絡を取る事は不可能。
荷物を送っておいて、俺からのお礼の連絡が無ければ
必然的に向こうから、連絡をして来るだろう。
俺はその荷物をそのままにして、仕事に向かった。
そう軽く考えてたこの出来事が
この後、とんでもない事件に発展するとは、この時はまだ知る由もなかった。
朝の仕込みを終え、営業が始まった。
ありがたい事にその日はお店も忙しく、多くの方から
LINEやSNSに『誕生日おめでとう』のメッセージがあり、
その返信などにも追われ、あっという間に一日が過ぎた。
ただ、一番連絡が欲しい人間からの連絡は無かった。
そう。この日の朝、俺の自宅に巨大なクマの何かを送り付けた人物だ。
仕事を終え、熱いシャワーを浴びる。
その時に、俺の意識の中にまたあの一抹の疑問がよぎった。
一体誰なんだ?そしてあの荷物は何なんだ?
重い鉛のような嫌悪感が胃に広がる。
だがすぐに、その嫌悪感がこの凶悪事件をこの手で解決したい使命感に変わった。
急いでバスルームを出て、スマートフォンを手に取った。
今までこういうドッキリサプライズをやられたり、やりそうな容疑者に
片っ端から聞き込みを開始した。
ドッキリと言えば登山会。

彼らのグループLINEに
『これ、君たちの誰か?』と写真を添付してメッセージを送信する。

答えはNO。全員『違います』の返信。
登山会女子が所属する“ニラヤマ組”にも聞き込みをしたが答えはシロ。
正月や周年の時には、いつも奇妙な書初めを持ってくる女弟子。

もちろん彼女にも『これ、君の仕業?』と写真と共に聞き込みを行った。

彼女は『ちょっとちょっと、なんでもうちらのせいにしないでくださいよ』と
俺からの取り調べを煩わしそうに訝しんだ。
人相は一番犯人らしい、後輩ケーにも。

『これ、君じゃないよね?』

誕生日には、必ず贈り物を送ってくれる、埼玉のルコにも。

彼女にはあえて、カマをかけて『これ、君でしょ?』と聞き込んだ。

同じく、いつも誕生日や周年の時には贈り物を送ってくれる、東京のアーにも。

『これ、君?』

そして、これだけの容疑者の中で、限りなくクロに近いと思っていた
俺の誕生日には、必ず焼津からいやげものを持って現れる花城組にも。

だが、これだけ沢山の容疑者に、厳しく聞き込んでも全員の答えは・・・
NO。

これだけの人数に聞き込みをしても、手がかりゼロか。
いや、最後に1人いる。今朝クマを見た瞬間、すぐに脳裏に顔が浮かんだ人物がいる。
前日、俺に誕生日プレゼントで流れる電光キャップをくれた、後輩ティーだ。

なぜなら、俺は過去に2年連続でティーの誕生日プレゼントに
巨大なクマのぬいぐるみを勝手に玄関に置いておく。というドッキリをしてるんだ。

このそうそうたる容疑者の中で一番動機が強いのはティーだ。
クマにはクマで仕返しをするという強い意識が芽生えるはずだ。
そして前日の流れる電光キャップはフェイク。
本命はこっちのクマだったに違いない!
手荒な真似はしたくない。お願いだ。自供してくれ。
そう思い、ティーに取り調べを開始した。
『これ今朝、家に届いたんだけど、君じゃないよね?』
少し間を空けて、ティーが静かに口を開く。
『俺じゃないです(笑)』『クマ二匹返却しましょうか?(笑)』

断る。巨大なクマが三匹になったら邪魔で仕方がない。
その後も少し取り調べを粘ってはみたものの、
結局自供は得られず、ティーは釈放。
仲間内以外の、心当たりのある何人かの容疑者にも聞き込みをしたが結果は同じ。
皆一様に『知りません』『僕じゃありません』『私じゃありません』との答え。
この日の聞き込み捜査は行き詰まってしまった。
重い疲労感が脳と体を襲う。
『他に誰かいるだろ!!!』『記憶を呼び戻せ!!!』
『もっと頭を回転させろ!!』『冷静になれ!!』
そう自らに喝を入れて、自分を奮い立たせる。
すると、一瞬の閃光が頭の中を駆け巡った!!!
そうだ!!俺は大事な事を見落としてないか?
犯人はいつもの仲間達とは限らないのではないだろうか?
そもそもこのクマは誕生日プレゼントではないのではないだろうか?
家族の誰かが買ったモノなのかもしれない。
そう思い、息子にも早速聞き込みをした。
『これに心当たりある?』

彼からの答えは『ない笑』『誕プレだら笑』
そうなんだ。普通に考えるとそうなんだ。
誕生日の朝にこんな巨大なクマが届くなんて、
誕生日プレゼント以外に考えられない。
という事は、今日聞き込んだ容疑者達の中に
嘘を付いている人物がいる可能性が非常に高い。
だが、全員のアリバイはシロ。
捜査は振り出しに戻ってしまった。
今晩はもう遅い。仕事と捜査で徒労した。
俺はベッドに潜り込んだ。
だが、体の疲労感とは裏腹に、頭は冴えていた。
無理矢理眠ろうと思って目をつぶったが、なかなか寝付けない。
ふと、目を開けたら寝室に片付けた、あの圧縮梱包のクマと目が合った。
その目はこの事件の難解さに苦戦してる俺を嘲笑っているように見えた。

『明日は必ず・・・明日はコイツを送り付けた犯人を必ず探し出してやる』
そう心に誓って、俺は毛布にくるまった。
翌日【4月8日】
誕生日は昨日で終わったというのに、
この日も誕生日プレゼントを持って来てくれる仲間達が沢山来てくれた。
いつメンの1人ヤマちゃん。

武ぞう女子部マチャ。

本当にありがたい。
だが、わざわざプレゼントを持って来てくれた仲間達にも、心苦しいが
『誕生日当日に大きなクマの何かが届いたんだが、心当たりないか?』と
容赦ない取り調べを行った。
ヤマちゃんは
「俺じゃないです。そのクマのぬいぐるみ、まだ圧縮梱包を開封してないんですか?」
「まだ犯人が分からないから、圧縮梱包したままにしてあるんだ」
そう答えると、
「いつメンのともしんや、そんな事やりそうな奴らに、俺も聞き込みしてみますよ」
とヤマちゃん。
マチャは
「私じゃないです。〇〇さんとか怪しくないですか?」
「そんな事やりそうな人、思い出したら連絡しますね」と
2人とも捜査協力をしてくれる事に。
それは助かる。こういう捜査は地道な作業で意外と知力と体力を消耗する。
協力者は多ければ多い方が良い。
そしてもちろん、この2人も自供は無し。
この2人もまだ容疑者に変わりないが、今の所、犯人である可能性はかなり低い。
俺はもう一度、数少ない情報を徹底的に洗い直す事にした。
もう一度、荷物に張り付けてあった宅配伝票に目を通す。

今のところ、手がかりはこの伝票しかない。
まず、その伝票に記載されてる千葉県成田市にある会社を徹底的に調べた。

楽天やAmazonに出店してる雑貨店。という事が判明した。
ただ疑問も数多く残った。
楽天のページを開くと、肝心な巨大なクマは販売してない。
もっと怪訝だったのは、この会社の要項を調べると、
会社の代表者の名前は中国人であった。
つまり中国人が経営するインターネット販売専門店と言う事になる。
そこまで調べると1つの懸念が浮かんだ。
仲間の誰かが誕生日プレゼントで自宅に送って来たのではなく、
中国人犯罪集団が勝手に荷物を送り付けて、
後で膨大な金額を請求されるような、詐欺なのではないか?
それとも圧縮梱包されたクマの中に、大量の覚せい剤が仕込まれていて、
俺は知らない間に薬物の売人に仕立て上げられてるのではないか?
そう考えるとますます圧縮梱包は簡単に開封出来ない。
俺は重大な何かを見落としてるのかもしれない。
これは俺が考えてるより、遥かに複雑で難解な事件なのかもしれない。
そう考えると背筋に冷たいものが流れた。
その不安や恐怖を打ち消すように、
今度は伝票にあった商品番号やカラーを徹底的に調べ上げた。

すると、ようやく肝の情報を得る事が出来た。
このクマの正体が分かったのだ。
これはクマの被り物でも、クマの毛布でもなく、
人間並みの大きさのクマのぬいぐるみであった。

つまり、犯人はこの巨大なクマのぬいぐるみをAmazonで買って
この会社から直接、無記名で俺の自宅へ送り付けたという事になる。
という事は、俺の中国の詐欺集団の犯行説の推理は杞憂に終わった。
でもこれで間違いない。
犯人は自分の名前を隠し、圧縮梱包してある
巨大なクマのぬいぐるみを勝手に俺の自宅に送り付け、

何も知らずに封を開封したら、みるみるうちにモコモコと
人間並みに大きくなるクマに戸惑う俺の姿を想像して笑っているのだ。

許せん!!そんな凶悪な愉快犯は絶対に許せん!!
絶対に・・・絶対にこの手で犯人を捕まえてやる!!
俺はまだ霧の中にいる犯人の正体を想像して固く拳を握った。
拳の中の掌に爪が食い込んで、薄っすらと血が滲んでいた。
翌日【4月9日】
捜査は難航していた。
この日も捜査協力者のヤマちゃんが、昼ご飯を食べに来てくれたり
マチャからもLINEがあったが、犯人に繋がる有力な情報は得られなかった。
そして朝には容疑者の1人、埼玉のルコから誕生日プレゼントが届いた。


キチンと差出人の名前も書いてある。二度も郵送でプレゼントを贈ると言うのは
ルコが犯人だと言うのは考え難かった。
夜には一度聞き込みを行った、限りなくクロに近いと思われた
花城組が誕生日プレゼントを持って、焼津から現れた。

中身は正真正銘いやげものの詰め合わせ。

一度巨大ないやげもののクマを送り付けたのにも関わらず
もう一度いやげものを持って、わざわざ焼津から来てくれた彼らを
やはり埼玉のルコ同様、犯人に結び付けるというのは考え難かった。
未だかつてないほど、捜査は壁にぶち当たった。
手掛かりが少ないうえに、容疑者全員が犯人の可能性が低い。
こんな事件は初めてだ。このままでは迷宮入りになってしまう。
いや、俺は絶対に諦めない。この事件は俺が必ず解決する。
花城組が帰った後、1人になって、
この事件のこれまでの犯行の流れを頭の中で整理した。
まず、犯人は俺の知らない人物の可能性は限りなく低い。
何故なら俺と面識がなければ、無記名にする必要はないからだ。
そして宛名。『中華武ぞう 武徳様』
こんな風に書くのは仲間内の仕業にほかならない。
間違いなく、俺が聞き込みをした容疑者の中に必ず真犯人はいる。
誰かが・・・誰かが嘘をついている。どこかがおかしい。
本能がそう、わめき始めている。その疑問が増殖し、脳の中で膨らんでいった。
もう一度容疑者をノートに書き出して整理する。
【登山会&ニラヤマ組】【女弟子】【後輩ケー】【埼玉のルコ】【東京のアー】
【花城組】【後輩ティー】【ヤマちゃん】【マチャ】そして【息子】
犯罪者には、それぞれ特有の心理状態がある。
『犯人は現場に戻る』という言葉があるように
放火犯は、自分が火事にした現場を野次馬のフリをして見ている事が多いし、
凶悪犯も、自分が犯罪を犯した場所を警察官が現場検証をしているのを
やはり野次馬のフリをして見守っている事が多い。
そして真犯人は、『秘密の暴露』と言って、犯人しか知るはずのない事実を
取り調べや何気ない会話の中で話してしまう。という傾向がある。
その事を強く意識しながら、この全員への取り調べを思い出し、
集中して、聞き込みのLINEをもう一度隅々まで読み返す。
何度も。何度も。
その時!!!!
頭の中に強烈な雷光が落ちた。暗闇だった頭の中が眩しい光で満ち溢れた。
バラバラになっていたパズルが“カチッ”っと音を立ててはまった。
今までぼやけた残像でしかなかった犯人像が、
霧の中からハッキリとした形になり、真犯人の顔が鮮明に頭の中に浮かんだ。
「そうだったのか・・・真犯人はアイツだったんだ・・・」
翌日【4月10日】
この日は爽やかな初夏のような陽気で、
一日中、半袖で十分なぐらいな暖かな日だった。
午前中、捜査協力者のヤマちゃんが
「これ、誕生日プレゼント第二弾の里芋でーす。みんなで食べて下さい!」
そう言って、美味しそうな里芋を沢山持って来てくれた。

「わーありがとう、ヤマちゃん!いつも悪いね」と俺。
その俺に「どうです?クマの真犯人見つかりましたか?」とヤマちゃん。
ヤマちゃんにこう答える俺。
「なんとなく、犯人と目星を付けた人物はいるんだけど、まだ最終的な確証が無くてさ」
「え?凄い!犯人分かったんですか!?誰です!?」
少し興奮気味のヤマちゃんに、俺はこう答えた。
「ねぇヤマちゃん。この里芋は誕生日プレゼント第二弾じゃなくて
第三弾なんじゃない?」
「え?どういう事ですか?」と驚いた様子のヤマちゃん。
俺の言ってる言葉の意味が理解出来てないのか、困惑した表情を浮かべるヤマちゃん。
その目をしっかりと見据え、俺はこう言った。
「ヤマちゃんのプレゼント第一弾は巨大なクマのぬいぐるみだよね?
そして、誕生日の次の日に持って来てくれたのが実は第二弾。
って事は、この里芋は誕生日プレゼント第三弾という事になる」
「・・・・」黙り込むヤマちゃん。
「誕生日当日に俺の自宅に巨大なクマのぬいぐるみ送り付けたの、ヤマちゃんだよな?」
「・・・・」里芋を持ったまま、無言でうつむいたまま動かないヤマちゃん。

「つまり、この【名の無い贈り物事件】の真犯人は、ヤマちゃん・・・お前だ」
しばらくの沈黙の後、微かに震えた声で
「なんで・・・なんで分かったんですか?」とヤマちゃん。
「誕生日の次の日に来てくれた時に、俺はヤマちゃんに
『誕生日当日に大きなクマの何かが届いた』とだけ言った。でもヤマちゃんは俺に
『そのクマのぬいぐるみ、まだ圧縮梱包を開封してないんですか?』と答えた。
俺は“ぬいぐるみ”そして“圧縮梱包”なんて一言も言ってない。
その事を知ってるのは、クマを送った人物。そう。つまり真犯人しかいないんだ」
「それと『犯人は現場に戻る』って言うだろ?
誕生日の次の日から三日間連続でウチに来てたの、ヤマちゃんだけだよ。
証拠を残してないかとか、自分がまだ犯人とバレていないかとか、
捜査がどこまで進んだとか、心配だったんだよな?今日もそうだったんだろ?
今日またお前が現れて、やっぱり真犯人はヤマちゃんだったんだ。って確信したよ。」
まだヤマちゃんは、下を向いたまま動かないでいる。

そんなヤマちゃんに「なんでプレゼントにクマを選んだの?」
と、優しく聞いてみた。
1つ小さい息を吐いた後、
「武さんち子供達も成人して、奥さんと二人になって寂しいだろうから
ペット代わりに。と思ってクマのぬいぐるみにしたんです」と話すヤマちゃん。
「でもただのぬいぐるみじゃ面白くないから、巨大ぬいぐるみにして
武さんが何も知らずに圧縮梱包を開封したら、クマがどんどん大きくなっていって、
きっと武さん、焦って慌てておもしろいだろうな~って考えてました。」
動機は俺の推理通りだったってわけだ。
ただ、最後まで分からなかった事が1つだけある。
何故、差出人を無記名にしたのか?
なんでヤマちゃんは自分の名前を書かなかったのか?
そう言って、ヤマちゃんにその差出人の書かれてない伝票を見せた。
するとヤマちゃんの口から衝撃の事実が告げられた。
「え!?俺、自分の名前書いてませんでした!?」

「あ~だから武さん何も連絡して来なかったのかぁ~クマを届けた次の日に
武ぞうに行った時に『オメーあんなでけぇクマ、送ってくんじゃねぇよ!』
って、武さんに言われないから、ガチで怒ってんのかと思ってましたよ~
だから、毎日武さんの様子見に来てたんです。そうか~俺、名前書き忘れてたか~」

オメーバカなの?天然かっ(笑)
なんと、真犯人のヤマちゃんは、本当は普通に大きなクマのぬいぐるみを
俺の自宅に送って、誕生日プレゼントにしたいだけだったのに、
差出人の欄に自分の名前を書き忘れるというミスを犯したのだ。
犯罪というのは、計画的に人を傷つけるような凶悪犯罪もあれば、
正当防衛ような、人や自分を守る為に起きてしまう事件もある。
今回のこの事件は、まさに後者に属すであろう。
今回の事件のように、ちょっとしたイタズラ心が、
犯人のたった1つのミスで、大事件に発展してしまうケースもある。
ヤマちゃんに罪はない。
ただ純粋に俺の誕生日を祝いたかっただけなのだ。
恨むとするならば、ヤマちゃんの天然ボケを恨もう。
俺もいつ、被害者から加害者へ変わる時が来るかもしれない。
そしてそれは俺だけではなく、誰にでも起こりえる事なのだ。
事件は解決した。安堵感が俺の心と体を包み込む。
俺は窓を開け、外の空気を吸い込んだ。
4月の初めだというのに、外はもう初夏のような陽気だ。
少し暑く感じたが快晴の空が心地良かった。
俺はその空を見上げ、静かに目を閉じた。
【完】
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